
先月2月の終わりごろ、グループ展の搬入のため東京へ行った際、時間があったので新宿御苑を訪れた。大型の温室がありテンション上がる。植物園などにもある大型の温室、異空間が広がるのが好きで見つけると入ってしまう。コートを脱ぎ、湿気の多い温室をゆっくり見て回った。
温室の順路の後半「タビビトノキ」と書かれた樹名板に目がとまる。中学生の頃、辻仁成さんの著書にはまり何冊か読んだ中でも好きだった本、「旅人の木」。確か行方不明の兄を探す話だった、と記憶が蘇った。

覚えているいくつかの会話と、印象的な最終場面の描写、この本で初めて知った「輪廻」という言葉。不思議な言葉と登場人物の話、「輪廻って何?」と母に訊いたことを覚えている(母は、仏教の言葉で生まれ変わりのことと教えてくれた)。
、、はて、その本の中に「タビビトノキ」はどのように登場したのだっただろうか。、、温室が出てきたっけか??記憶は曖昧だった。気になったので実家に帰った時にでも探してまた読もうと思った。
後日、実家からの帰り道に、本を探すのを忘れていることに気づいた。少し悩んだけれど古本で安くで売っていたのでネット注文で入手した。気になることには「何か」が隠されていることがある。
「タビビトノキ」が登場するのは、大型の温室ではなく、デパート屋上の園芸売り場だった。このシチュエーション、当時の私もときめいたに違いない。
中学生の私と、今の私。
知っている知識も、感じる世間も、世界の広さも違う。
当時の私が、どのようなことを感じ、この本が好きだったのか。記憶には残っていない、深読みした伏線や新たに考察したストーリーがあった。というのは「そうそう、そうやった!」とストーリーを思い出したのではなく興味深く読んだ部分があったということ。
「ヤスダ」という人物が出てきたとき、あ、ヤスダ、そんな人確かに出てきた、という記憶とゾワっと不穏な感情が蘇った。
さすが30年以上昔の記憶、「ゾワっと」の正体は読み進めるうちに、、、あ、ああ、そうやった、に変わった。そして、じわりと物語の終盤を思い出しながら噛み締めた。
この本の季節が3月半ばから後半頃、今とドンピシャな季節に、興味深い本に再開した、なんだか懐かしい子ども時代の「大事物入れ」を開けた、そんな年度末。新しい年度を迎えるにふさわしい年度末になりました。
