背中を押してくれるもの

いつもの日記作品だけではなく、大きめの平面作品を描こうと思った。

とはいえ、アトリエがあるわけではなく大型作品を描いたり保管する作業スペースは無い。

世の中にはパネルやキャンバスに描かれてなくても、画面自体にパワーがあることで立派に存在する作品がある。大きめの紙にドローイングを描き、額も台紙も使わず、ただ虫ピンで貼るだけで存在できる絵に挑戦してみようと決心した。紙であれば、かさばらず保管も持ち運びもできる。紙を求めてネットでサンプルを取り寄せ、京都と大阪のお店をまわり和紙や水彩紙を購入し検討、最終的に京都の紙司柿本さんで購入した「雅風」というドーサ引と呼ばれる滲みどめ処理が施された和紙に決めた。

題材どうするか悩む視線の先に、買ったものの読んでなかった昭和の文豪、三島由紀夫氏の小説「青の時代」。以前拝読した「金閣寺」は、独特の情景描写に心震え大変気に入る一冊になったのだった。恐れ多くも文豪の小説を題材に選ぶことにした。

制作スペースの都合がきっかけで和紙に描くことに行き着いたけれど、この小説の世界観に合うのはキャンバスでもパネルでも上等の水彩紙でもなく、薄くて頑丈それでいて人の手で簡単に破れる儚さを併せ持つ一片の和紙だという事に読み進め描き進めるうちに、気づいた。

偶然なのか同時期に無意識で選んだ結果の必然なのか、こうゆう不思議なシンクロが起こるとき「それでいいんだよ」と誰かが背中を押してくれている、そんな気がする。